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地団駄を踏んで1up
はじめまして(以下 和田)地団駄を(以下 アキ子の)踏んで(以下 口は)1up(以下 臭い)の日向寺(以下 らしい)です。
あらためて挨拶します。
こんばんは!和田アキ子の口は臭いらしいですよ!
物事は往々にしてうまくいかない。
近所にシャレた美容室ができた。青い看板のそれは住民の目をひきつけるに十分だった。
その店の横で何か工事をしている。きっとお洒落な洋服屋か何かだろう。店長も気分がいい。
そうこうしているうちに隣の店の様子がわかってきた。
すき家だった。
えー?
店長にとってはまさかの展開。
店のテーマカラーの青、すき家の赤と黄色。それが並んでしまった。
これではまるで某宗教のテーマカラーではないか。
このままではまずいのではないか。自分が目指していたものとは違う気がする。
間違って信者の山本リンダが入ってきてしまうという危惧。
そこにオシャレが入り込む余地があるだろうか。いや、ない。
リンダが美容室と間違えて入ってくるのだ。間違えた様子のリンダ。周りを見渡しおもむろに一言
「リンダ困っちゃ〜う!」
えー?
なんだそれは。
店長も困っちゃ〜う。狙い撃ち注意。こんな張り紙をしなければならないのか。
そもそも隣にすき家がある美容室。それはどうなんだ。客が米を袖とかにつけてくるのである。これはいけない。
この店がデザインパーマという名の謎のパーマをかける店になってしまう。
店長はそう思ったのだろう。その対策に躍起になった。やしの木を置いたのである。
やしの木?
いかんともしがたいチョイス。果たしてやしの木はお洒落なのだろうか。
わからないのだがとりあえず置いてしまった。きっと店長は追いつめられていたのだろう。
それくらい赤と黄色のすき家は隣の美容室を侵食しはじめていた。牛丼を買いにきた僕のような底辺の人間が美容室を見てヘラヘラしだしている。
「店がスケスケ、スケスケだなあ」
弁当待ちの間、まるでランジェリーパブにいるかのような感想を述べているおっさんがいた。
まるで僕の20年後だ。
これじゃいかんだろう。
だが、やしの木でスタッフの矜持も保たれる、そう思ったのも束の間、店の前に近所のパチ屋の景品のカプリコやコアラのマーチのゴミが落ちだした。
またも店長は困っちゃ〜う。
そりゃあそうだろう。お洒落な美容室を目指し作った店の横にすき家ができ、挙句、店の前にはカプリコの食い散らかしだ。お洒落もへったくれもあったものではない。
このままではおしゃれカットという謎の散髪方法をする店になってしまう。
しかもカプリコといえば馬場である。ジャイアント馬場の顔を浮かべながら髪を切られる。客にとってはこんなに居心地の悪いことがあるだろうか。髪を洗うために前かがみになる。客はどうしてもココナッツクラッシュをかけられている気分になるのだ。
「痒いとこアポですか」
こう聞かれる気がするし
「社長!あるわけないでしょう!」
こう言わなきゃいけない気がする。
誰がそんな美容室で髪を切りたいものか。
だが店長は諦めなかった。木のベンチを置いた。
木のベンチ??
だから、その選択はなんなんだ。
よくわからない。僕が座ったらどうする気だったのだろうか。
やしの木の間のベンチに佇む26歳の小男。画的に相当いけない気がする。
しかしその店の平和は保たれた。もうゴミも落ちないし、すき家も圧倒した。僕もそこには座らない。さすがに店長の意地に負けたのだ。
今日美容室の前を通りかかった。ベンチに誰か袋を持って座っている。ちょっと早いサンタだろうか。とにかくお洒落な人形とかその類のものを座らせているのだろう。
乞食だった。
乞食だったよ。
もうどうにも止まらない。